Chocolate

どこに転がっていくの、林檎ちゃん /レオ・ペルッツ


チェルナヴンスク強制収容所で受けた屈辱を晴らすために、革命後ロシアへ戻るお話。


就活中にもかかわらず読了しました。

一言で感想を言うなら、そんな結末なの!?という感じです。

ひとつの目的を達成するために2年間の人生を棒に振り、友を殺し、浮浪者になったのに、ある意味で目的にはたどり着いたが、達成はできなかったという感じじゃないでしょうか。


試合に勝って勝負に負けたとは少し違うのかな。


印象的な場面としては、場面場面で描写される屈辱を受けたシーンです。

何度も何度も同じように、セリュコフから赤いカーテンの部屋で受けたあの言葉、ポショル!という言葉を浴びせられる場面が登場します。

その度にその屈辱を思い出し、セリュコフを追いかける意味を思い出しますが、それはヴィトーリンだけではなく、読者の私たちにも当てはまります。ヴィトーリンがタイトルの林檎が転がっていくように、ヨーロッパ各地を転々とし、その置かれる状況が変わる度にその場面が登場するのです。


そして、毎回思い出すのです。

彼にかけられた、「ポショル!」という言葉を。


彼にとっては2年分を費やすほどの屈辱だってのでしょう。

しかし、同じように強制収容所でセリュコフに雑な扱いをされた当時の仲間は初期の段階で当てになりません。

一緒に復讐に戻ろうという約束は果たされず、唯一一緒に戻ってくれようとした彼は国境を超えられず逮捕されました。

1人目のヴィトーリンの損失です。

ここから彼は一人で旅を始めるのですが、各地で様々人に出会います。そして失うのです。

彼の復讐のために協力してくれた、(具体的には言っていないけれど)彼に関わった人たちが次々と消えていくのを読むと、なんとも言えない気持ちになりました…。

ガガーリン伯爵は良い戦友だった…。

そうやって彼はセリュコフを追いかけ回す日々を2年間も過ごしますが、結局セリュコフがいたのはヴィトーリンの故郷のそばでした。

それまで各場面で登場していたセリュコフに復讐を果たすシーンが最後に繰り返されます。


しかしヴィトーリンがセリュコフをリボルバーで撃つことはありませんでした。

彼は落ちぶれたセリュコフに失望したのか、セリュコフに会うという目的を達成してしまったために満足したのか、当時の屈辱を忘れてしまったのか、血の争いは起こりませんでした。


その終わり方が嫌だった訳ではありませんが、期待していた最後ではなかった分拍子抜けというか、言葉が出ませんでしたね。

でも人間らしい最後だったと思います。

場面場面が想像しやすい丁寧な描写はとても好感が持てました。


タイトル通りりんごが転がるように、色んな様々な凸凹道を下る小説でした。

面白かったです!!!!




Sai

knowing is seeing.

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