Ivory
朗読者 / ベルンハルト・シュリンク 松永美穂 訳
犯罪者を愛したことが罪になるのだった。
こんなにも切ない一文があるのか、と1番印象に残っています。あなたが愛した人が戦争犯罪者だったらどうしますか?という質問にも答えられなかった。
大学のゼミで、私の卒論のテーマに関係していて読んでみる価値があると教えて頂き、その足で本を買いに行きました。
わずか15歳の主人公と36歳の女性が関係を持つ描写から始まり、年の差の問題についての話かな?と楽観視して楽しみに本を開いた私を殴りたい、切実に。
私はこれほどに感想が言えない本にであったことがありませんでした。
卒論テーマは負の記憶を継承することについてです。
本文中にある、
「形式的なステレオタイプのナチズムについての資料を読んだだけで、知ったように情報を刷り込んでいるだけ」
というふうな文に、ガツンと頭を殴られたような気がしました。
私はまさにそうなのではないか??
現場を訪れたこともないのに、戦争を体験したわたけでもないのに大口をたたいて、記憶を継承しなければいけないなんて論文を書いていいのか不安になりました。
それは置いておいて、
主人公の彼が裁判を受ける彼女の過去に苦しめられ、過去の再検討について思いをめぐらせる描写は、当時60年代の人々が体験した親世代の犯罪について考え、困惑した子供世代のくるしみを再現しているようでした。
犯罪を黙認した彼らをどうしようか?犯罪者と何が違うのかとナチズムを理解する、ナチズムに支配された世界を理解するために戦った世代を感じました。
ハンナの文盲については、最初の描写で薄々勘づいてはいました。
しかしまさか、“戦争犯罪者側”だとは思わず
「えっ!?」と声に出したほど驚きました。
文盲であることはの恥ずかしさ、それを恥じる彼女のプライド、そのプライドのために人生の半分以上を無駄にし、己に重い罪を自ら被せた彼女を何一つ理解するとこはできません。
なぜなら私は文盲ではないから。
恵まれているから、文字を読めるし、書けるし、難しく長い論文だって頑張れば読み書きもできる。
だから、彼女の思惑をしっかり理解することなど死んでもありえないのです。
彼女のしたことをわかったように頷くことはしたくありません。彼女を侮辱していましそうだから。
そういった感想があふれでました。
辛かったよ…!
でもこれほどに悲しい本を読めたことも幸福でした。
教えてくださった先生と、ゼミ生には感謝です…!
次は映画だな!
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