Red

分別と多感 ジェィン・オースティン 中野康司 訳


ゼミの課題でよみました。

理性と感情のお話で、イギリスの二人の姉妹を描いた物語です。


率直な感想としては、まず人間の感情描写が多彩というか、人間性を説明する文章が大部分を占めているにもかかわらず面白い!ただ一言に尽きます。

いえば人間性をはっきりさせることに力を入れていると言っても過言ではなく、物語としては一姉妹の日常を描いたものであり、特段非日常なことが起きるわけではありません。

そうであってなぜ面白いのか。

登場人物の人間性が明確で、人物像を想像しやすいからではないでしょうか。

人物に対しての感情描写や、見た目、世間からの評価、一人物のキャラクター化への異常なまでの固執(言いすぎかな?)が、その人物を想像させやすくしており、ある意味リアリティというか実際に存在しているかのように錯覚させているのではないでしょうか。

あとは、ストーリーが努力の上に成り立つ幸福の形である事も理由の一つであると思います。あるいは、挫折を乗り越えた上のしあわせ。

日本人に親しみやすいと言うより、世界共通で好まれる傾向ですよね。


登場人物に対して、

個人的に一番共感が得られる、好きだなと思うのは、「エリナー」です。

彼女は最初に表現した理性と感情で言うところの前者の人間です。自分の感情さえも制御し、分別をわきまえる、感情に振り回されない人物。常に冷静で、多感な妹のストッパーです。彼女が自分の失恋の苦痛を我慢し、目に余るというか明確な妹の不幸のために己を殺して妹を慰める姿は、長女である自分に重なるだけでなく、人間としての敬意を抱かずにはいられません。

対して妹の「マリアン」について。多感である事は、感情を表に出せると言うことで、その人物のその時の心情がわかるわけですから、好感ももたれるし、反対に反感を買うこともあります。簡単にいえば素直なんだと思います。彼女の長所であり短所です。

この性格により、不幸になる人物はエリナーでしょう。しかし彼女たち姉妹は途切れぬ愛が強調されていますので、不仲の心配が無いところが面白いところです。喧嘩をする心配が無いので、安心して読み進められました。(私はバットエンドは嫌いです。)

この二人が最終的にはしあわせになりますが、エリナーに関しては心の底から嬉しかったです。彼女には幸せになってほしいと切に願っておりました。

エドワードは最初から後ろめたそうな描写があって仕方なさがありますが、ウィロビーに関してはただのクズでしかないですね。最後の弁解でさえも言い訳にしか思えなかったです。

関連してブランドン大佐はいい人ですね。彼の過去を知ったときは一気に好きになりました。彼には幸せになってほしかったのです。(二回目)


今回ゼミの課題として、この本を読みましたが、はっきり言って普段の私は確実に手に取らないようなジャンルだったので読み終えられるか不安でしたが、いらぬ心配でした。

やはり名作と言われるだけあり、古典文学であるにもかかわらず期待以上に楽しめる作品でした。明日、分別と多感を原作とした映画を見ますので、原作との違い、人間描写の仕方など比較しながら見れたらいいなと思います。

実写映画はよくがっかりすることが多いので、しなければいいなぁという気持ちです。


映画のtrailerです↓


Sai

knowing is seeing.

0コメント

  • 1000 / 1000